原田 隆史(18期生)

日本一、世界一を作る教育に情熱を注ぐ

haradaみなさんこんにちは。私は18期生の原田隆史です。

卒業後、奈良教育大学に進学し、20年間大阪の公立中学校に保健体育の教諭として勤務しました。その間に陸上競技部を指導し、全国大会で個人優勝13回を達成すると共に、問題を抱えた学校を立て直すことが出来ました。現在は、家庭、学校、国内外の企業、プロのスポーツ選手等を教育する会社や一般社団法人を経営しています。本日は、私が教員時代と企業教育から学んだ「人を日本一に育てるコツ」についてお話をしたいと思います。

教員生活14年目、三校目の赴任校に着任しました。当時の中学校は多くの問題を抱えていました。いろいろな方法で学校と子供たちの立て直しに挑戦しました。厳しい状況の組織や学校を再建させるためには、モデルが必要です。人々のエネルギーを高め、「よし、私もああなるぞ!頑張るぞ!」と思わせる理想のモデルがいるのです。私はそれを「陸上競技日本一」に定めました。スポーツやビジネスで結果を出し、日本一になるためにはコツがあります。最初はゴール設定です。

始めに生徒に質問します。「目標は何や?」ある生徒が「砲丸投げで日本一になる」と言いました。「すごいな。いつ日本一になる?」と聞くと、「8月22日、長崎県の全国大会で優勝します」と言いました。

「その目標に対して目的は何や?」と次に聞きます。生徒がこう言いました。

「家は母子家庭です。母さんが毎日新聞配達をして、兄弟3人を必死で養ってくれています」生徒の兄が専門学校に行ったため、母親は親戚から多額の借金をされました。生徒に隠していましたが、本人は気づいています。

「先生、本当は中卒で働いて、家に仕送りして母さんを助けたいです。だけど、僕は将来、原田先生のような体育の教師になりたいです」と彼は言いました。私は感動して泣きました。「ええやん、いけるで」と言うと、「先生、日本一に絶対なるので、私立の陸上競技強豪高校のスポーツ推薦、3年間の授業料全額免除の奨学金をもらっていただけませんか?」と言いました。私はこういう生徒のために生きています。

「よしっ! お前な、大阪で優勝した時点で奨学金大丈夫や。目標は砲丸投げ日本一、目的は奨学金を手に入れるでいいか?」と聞いたら、「違う」と言うんです。

「じゃあ、目的はなんや?」と聞くと、突然、彼は涙を流しました。「どうしてん、頑張って言えよ」と言ったら、「先生、目的は親孝行です」と言いました。周りで騒いでいた生徒たちも急に静まり、寄って来ました。

その子の目的は親孝行、そのために砲丸投げ日本一になって、高校進学の奨学金を手に入れ、高校、大学で頑張って教師になる。すべては親孝行のためです。

結果を出す人は「目標と目的」を持っています。優先順位は、目的一番、目標二番です。遠くに崇高な目的があるからこそ、途中にある目標を頑張れる。大切な心のあり方を生徒から教えてもらいました。

次に、失敗が許されない、命がけで働く人や仕事の世界には「危機管理の法則」があります。武士、警察官、消防士、兵隊から学びました。「最低・最悪の状態を予測し、ありとあらゆることを準備し、最高の状態で臨む」という考え方です。そうすれば、平常心が生まれ、楽観的に対応ができるのです。私はこの教訓をプラスの短い言葉にまとめました。それが、「予測と準備」です。日本一になりたければ、ありとあらゆる手段を全て考えて準備し、手を打つ必要があります。計画的にこの「予測と準備」を進めるために、シナリオ=長期目的・目標設定用紙を書かせます。私は文字を書くことは思考することだと捉えています。文字はその人の考え、やる気、決意そのものです。書き続けていくと少しずつ自分が目指すところのイメージができてきます。人は心の中で描く自分のイメージより上に行くことはありません。表面上は体格や技術、体力の違いで勝負がつくように見えますが、実は違います。最後は自分に対するイメージ、自信、心なのです。この世の中のすべての物は、人が頭の中に描いたイメージから生まれました。

これからも、夢や目標、理想や願いを掲げ、圧倒的な「予測と準備」で結果を出すコツコツ型の教育を広め、人材教育の分野で貢献して行こうと思います。

本日は執筆の機会を与えていただき、本当にありがとうございました。愛する阪南高校関係者の皆様のご活躍を祈念しています。感謝。

-2014(H26)年度「同窓会報」より転載いたしました-