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大阪府立阪南高等学校同窓会

事務局だよりSERVICE&PRODUCTS

7期生 石黒さんよりG

気が付けば8回目となる石黒さんの記事。今回はご自身が就かれたお仕事に関して書いてくださいました。日本で英語で道案内するだけでもあたふたしてしまいそうですが、仕事となると更にハードルが高そうな気がします。。。ご興味のある方はぜひご覧ください。



◆カナダの大企業での仕事環境◆

今回の記事は私が知っているカナダの大企業の仕事環境についてお話させていただきます。

私はIT関係の仕事をトロントで40年以上してきましたが、生命保険会社に約18年、アイ社に14年、そして最後にメガバンクに10年勤めてリタイヤしました。ラッキーなことに仕事をしていたところがカナダの一流企業で、働く環境としてはとても恵まれていたと思います。綺麗なオフィスビルの中で、キュービクルと呼ばれる1メーター50センチぐらいの高さの壁に囲まれた個人のプライバシーが守られているところに机、本棚、パソコン、モニターそれに電話が完備していたところで仕事をしておりました。隣の人の顔は見えない様に設定されていて、とても快適な労働環境だったと思います。

仕事はどこでもフレキシブルアワーというシステムが使われていて、朝は6時から9時までの間に出勤すれば良くて、一日7時間半働けばそれで帰れる仕組みでした。こちらでは残業というのがありません。40年以上働いてきて、俗に言われている残業はしたことはありませんでした。皆定時で帰ります。午後5時以降は個人の時間で、会社に関係することにはかかわらなくてもよくて、仕事の後の付き合いとかは一切ありません。仕事が終われば自分の好きなことができます。

又働いていて、日本と大きく違うところは、会社内で人の名前を呼ぶときです。大企業であっても相手の会社内での地位がどうであれ、必ずファーストネームで呼ぶようになっています。上司であれ、年上であれ、局長であれ、副社長であれ、絶対に人をラストネームでは呼んではいけないことになっています。人をラストネームで呼ぶとその人を侮辱していると受け取られ、不愉快にさせるか怒らせてしまいます。日本的な感覚で行くと、MR 何とかさんと言った方が失礼に当たらないような気がするんですが、こちらではやるべきではありません。

(↑私が最初に勤めた生命保険会社のトロント本社ビルの写真です。)

私はラッキーなことにカナダを代表するような大企業3社で仕事をすることができましたが、その中でもアイ社が仕事的に言えば一番難しかったと思います。当然現地採用ということで雇われたんですが、最初にアイ社の仕事に向いているかいないかの筆記テストがあり、その後数週間して技術者二人とアイ社の本社で面接があり、色々技術的なことを質問されて、アイ社のオンライントランズアクションソフトウエアーのことをどのぐらい理解しているのかと問われました。面接は何とかうまく行って、後日アイ社の人事部から連絡が来て採用ということが決まりました。

私が配属されたところはトロントのアイ社 Canada 本社の色々なメインフレームのソフトウエアーをサポートする部門で、私が担当することになっていたオンライントランズアクションソフトウエアーの部門では6名ほどの方たちが働いておられました。この部署での役割は、カナダ全土でのオンライントランズアクションソフトウエアーのDefect (故障とか不具合)、並びにQ And A(Question and Answer) のサポートでした。それとアイ社 U.S.A. のアメリカ東海岸からハワイまでのQ And  A サービスの提供でした。Defect  の対応は原則として電話対応で、Q And A  の対応はメール形式の対応になっていました。Q And A というのはこのソフトウエアーに付いている色々な機能について、各機能をどういう様に使えばいいのかという質問に答えるサービスの事です。

このオンライントランズアクションソフトウエアーは世界中で使われていて、アメリカを代表するような大きな企業、金融関係、政府関係、大学等から質問が毎日の様に入ってきて、それに迅速、適格に、答とか助言を提供しなければいけませんでした。入って来る質問はアメリカの大企業の本社とか政府関係のシステムを置いている東海岸からたくさん入ってきていたように思います。特にニューヨーク、ボストン、ワシントンの近くからの質問が多かったように覚えています。アメリカ中部から西部にかけては、入って来る質問なども東部に比べると、かなり少ないように思われました。

質問は短いのであれば2-3行の文章で、長いのであれば、紙1-2ページぐらいの長い質問もあり、それを早く正確に理解してお客さんが何も求めているのか正しく判断して、それから色々な事を自分で調べ上げて、客が求めている答え、助言等を英文で作り上げて素早く提供しなければなりませんでした。短い長いにかかわらず、入って来る質問は簡単なものは少なくて、難しかったのが多かったように思います。

質問はお客さん達がアイ社のネットワークシステムを使って普通はメール形式で送られてきますが、緊急の場合は電話対応で答えなければなりません。電話対応は大変です。向こうからどういう質問をされるのか分からないので、知らないことを聞かれると、焦ってしまいます。

アイ社で働いていた時は、仕事は大変だったんですが、その反面、従業員への福利厚生、オフィス環境、教育はよかったと思います。それとか、毎年アメリカで行われるオンライントランズアクションソフトウエアーに関してのユーザーグループ会議に我々のグループから数名出席できることでした。会議は1週間開かれて、毎年場所が変わって行われるんですが、アメリカのいろいろな大きな都市を訪れる機会を貰いました。シカゴ、フロリダ、テキサス、サンフランシスコ、ロスアンジェルス、アリゾナ等に行かせてもらいました。大きなソフトウエアーになると数年に一回ぐらいの割合でソフトウエアーの新しい配信があって、お客さんからそのことに付いてたくさんの質問が入るので我々はその質問に答えられるように前もっていろいろな情報を、ユーザーグループ会議に出席して集める必要もありました。

アイ社で仕事をするためにはとにかく特定のソフトウエアーに関してのとても深い知識が必要とされていました。Defect  の場合は、いかに早く故障の原因の答えを発見して、ユーザーの故障を直すかということが問われていました。IT業界でよく言われていたことは、アイ社で仕事ができれば何処に行ってもできると言われていましたが、まさにその通りだったと思います。

ある日突然上司のオフィスに呼び出され手紙を貰いました。何月何日までにアイ社内で別の仕事を見つけられない場合は、アイ社を辞めてもらうという内容のものでした。結局会社内でほかの仕事を見つけることができず、アイ社で14年働いた後に退社しました。

やめてから色々探していたんですが、なかなか同じような仕事が見つからず、仕方なく、最初の一年間は語学学校で、日本人の成人の生徒さんたちに英語を教えて、次の年は、トロントで一番大きなGMのキャデラックのディーラーで、修理に来られたお客さんの送り迎えをする車の運転手をしておりました。運転手をしていて驚いたことは、ほとんどのお客さんたちが、私の隣の前の席に座られて、車が動き出すと、私に色々話しかけてこられたことです。私はまた変な年寄りのアジア人男性には興味がないと思っていたので、このことは意外でした。ほとんどの方たちが、とてもフレンドリーでした。

その間、色々手分けをして、ITの仕事を探していたんですが、2年目にして60歳の時にやっと見つかり、新しい職場はカナダの5大銀行の一つで、仕事はアイ社のオンライントランズアクションソフトウエアーの保守管理の責任者ということでした。

銀行での私の役割はこのオンライントランズアクションソフトウエアーが新しくリリースされるたびに、銀行のメインフレームと言われる大きなシステムの中にインストールして、その保守管理をするのが主な仕事でした。それとこのソフトウエアーに付随している、色々なOEM のソフトウエアーの保守管理も私の責任でした。普通会社で使っているコンピューターシステムは、アプリケーション側とシステム側から成り立っています。銀行だと、預金、家のローン、投資とかいろいろなアプリケーションがあるんですが、こういうアプリケーションを走らせるための、土台のシステムの設定並びに保守が私の仕事でした。

72階建ての銀行の本社ビルはトロントのダウンタウンにあったんですが、私が働いていたデーターセンターの建物は、すこし郊外にあり、4階建ての大きなビルが3つ立っていて、その中に大きなアイ社のコンピューターが設置されていて、此処からカナダ全土の支店とか、ATM, 並びにアメリカのシカゴの近くにあるこの銀行が持っている中堅の銀行のシステムもここから動かしておりました。ですから私の責任としては、カナダのアプリケーションの土台システムのサポート並びに、アメリカの銀行で走らせているアプリケーションのシステム側からのサポートも私の責任でした。

銀行のデータセンターには、数千人のシステム関係の人たちが働いていたんですが、私が知っている限り、日本人は私だけでした。システムサポートしている人たちの多くは、中国系の人たちが一番多くて、それに次いで、インド、スリランカ系の人たちが多かったように思います。これはトロントにある大きなIT企業ではよく見られる光景です。マネージャーとか中間管理職の人達は、白人が多くて、その中でも女性の割合が、多かったと思います。これはアイ社でも似たような状況だったと思います。それとカナダの銀行の間でいま良く行われているのが、夜中に走らせるバッチプログラムと呼ばれる古い形式のプログラムをインドから処理することです。カナダから外注できるものは、どんどんとインドの方に出してコスト削減をしています。私も時々インドの全然知らない人達からシステム関係のトラブルなんかをメールで相談を受けていました。

(↑私が勤めたメガバンクのデータセンターの写真です。)

銀行で10年間仕事をしてきて、71歳の時にリタイヤしたんですが、労働環境はとても快適なものでした。自分に与えられた仕事をちゃんと期限内に間違いなくできていれば、上司もそれをちゃんと評価してくれていましたし、とても仕事がやりやすい環境でした。特に銀行という仕事環境では、ソフトウエアーの保守管理で、失敗は絶対に許されないという空気がありました。私がミスをしてしまうと、何十という大きな銀行内のアプリケーションに影響が出てしまい、一般のお客さん達にも迷惑がかかるので、新しくソフトウエアーを入れ替えたりするときは、細心の注意を払って仕事をしておりました。10年間仕事をして、何百回と銀行のソフトウエアーの保守、Maintenance, をしましたが、失敗は一度もありませんでした。自分の仕事のキャリアーの最後でこんな素晴らしい環境で仕事をできたことに感謝しております。

後残り数回の同窓会サイトへの記事の投稿を予定しています。次の記事は、将来海外で活躍したいと考えておられる若い方々は大学でどのような学部に進めば良いのでしょうか、英文系それとも理系?私の今までの経験から何か参考になる助言でもできればと思っています。



いつも興味深いお話をありがとうございます。留学等で海外進出を考えている方にはきっと参考になる記事ばかりだと思います。

石黒さんの過去の記事は、以下からもご覧いただけます。

第1回「大谷翔平選手、トロントで勝利投手に」
第2回「カナダで1番大きな都市・トロント」
第3回「トロントのクリスマスと新年」
第4回「日本人と英語」
第5回「私の英語とドイツ語」
第6回「英語を喋る上で気を付けて頂きたいこと」
第7回「トロントの学校制度」






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